「のれん式」という仕事の作法 その9

<商ほど素敵なものはない?> 僕の世代は、江戸時代に士農工商の身分制度があったと教えられました。何か変だなあと思いながらも、反論するにもその材料を持ち合わせていないので、そのまま大人になりました。それほど昔のことではありません。士農工商を学…

「のれん式」という仕事の作法 その8

<イエ・イズ・ノット・ア・家> ピンときた方もいるでしょうが、上の奇妙な見出しは、ジャズのスタンダード・ナンバー、「ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム(House Is Not a Home) 」を捩っています。B・バカラックとH・デイヴィットのコンビによる作品(…

「のれん式」という仕事の作法  その7

<ピュアなのれんを追いかけて> さてお分りのように、この先、暖簾と“のれん”に加え、家と“イエ”の区別もしながら書いていく必要があります。我ながら実に紛らわしいと思っていますが、仕方ありません。とはいえ話がここまで来れば、暖簾という漢字は後ずさ…

「のれん式」という仕事の作法  その6

<のれんの中にイエがある> 店舗の暖簾、その初期の段階では、目隠し・日除け・埃除けという物理的機能に加え、目印になる図形とか屋号などを布に染め込むことによって、店の独自な存在を示す記号的要素を生み出しました。そして商人たちが武家を真似て自家…

「のれん式」という仕事の作法 その5

<布きれ一枚、そのこちら側> ──── 「暗い」 暑い夏の日ざしを避けて、丸に越の字の紺暖簾をくぐって店内に入ったとたん、高橋義雄の受けた印象がこれであった。 (同じ三井でありながら、銀行とはまるで違う。明治の御世も二十八年というのに、ここはまだ…

「のれん式」という仕事の作法 その4

<いつもの名前で出ています> 室町時代に、民家の生活用品としての暖簾が商家の商売用具としての暖簾に転化しました。そしてその商売用具としての暖簾には、商業の発展とともに、つまり商家の活動の充実とともに、新しく二つの大きな状況が生まれました(完…

「のれん式」という仕事の作法  その3

<暖簾は内、暖簾は外> * 訂正です。日本の暖簾の実用的機能として、「日除け・埃除け」と書いてきましたが、あとから言及するという意識が災いして肝心なことを除外していました。「日除け・埃除け」だけではなく、当然のことながら「目隠し」の用途があ…

「のれん式」という仕事の作法  その2

<暖簾の顔はひとつじゃないよ> ここでさらに別の絵巻物を参考にします。こういう場合、絵巻物はいわば唯一の生き証人ですから、頻繁に登場願わざるを得ないのです。谷峯蔵さんは次のように書いています。「鎌倉時代中期の正安元年(1299年)に成った「…

「のれん式」という仕事の作法。

世の中も自分の人生もこの先どうなるか分からないし、そこそこ平和なうち、あまり触れられなくなった”のれん”について書き始めます。広告会社勤務というかつての職業も関係して、ひとより少しは知識があり、さらにそこから、勝手にいろいろな意味を引き出す…